カテゴリー:世田谷区事業ごみ産業廃棄物
産業廃棄物マニフェストが「不要」になる10のケースと注意点
「マニフェストを発行しなくて済むなら、事務作業が劇的に減るのに…」
産業廃棄物を排出する企業の担当者の方であれば、誰もがそう考えたことがあるのではないでしょうか。
産業廃棄物処理におけるマニフェストの交付は原則義務ですが、特定の条件下では法的に「不要」となる例外ケースが10種類存在します。
本記事では、この10の具体的な例外ケースを紹介します。 さらに、マニフェストが不要な場合でも法律上「絶対に必要」となる代替措置(委託契約書など)と、判断を誤りやすい「有価物」との境界線について詳しく解説します。
法令遵守(コンプライアンス)を徹底しつつ、マニフェスト管理の事務負担を最小限に抑えるための参考にしてください。
目次
産業廃棄物マニフェストが不要になる10のケース

産業廃棄物の処理委託の際に、マニフェストが不要となるケースは、国や自治体への委託、または再生利用を目的とした特定の処理ルートを通る場合に限られます。
その理由は、これらの処理ルートにおいてマニフェストと同等以上の不法投棄防止と適正処理の仕組みが法律で認められているためです。
以下の10のケースでは、マニフェストの交付義務は不要ですが、例外規定を適用するための厳格な条件を満たす必要があります。
①国に処理を委託する場合
国が設置・運営する施設(例:研究機関など)に対して産業廃棄物の処理を委託する場合、マニフェストの交付は不要です。
国は、廃棄物処理法に基づく監督官庁そのものです。自らが適正な処理を行う仕組みを持っているため、排出事業者にマニフェストによる管理を義務付けていません。このケースに該当するかどうかは、委託先が国の機関であるか否かで判断します。
②都道府県・市区町村に処理を委託する場合
①と同様に、都道府県や市区町村といった地方公共団体が処理を行う場合もマニフェストは不要です。これは、自治体が排出された産業廃棄物を適正に処理するための体制を整えているという信頼に基づいています。
ただし、自治体に処理を委託できるのは、自治体が自ら処理を行う産業廃棄物の種類や、処理施設の受け入れ基準を満たしている場合に限られます。事前に各自治体のルールを確認してください。
③都道府県知事の指示を受けた業者に処理を委託する場合
災害等による緊急事態の発生時や、適正な処理が行えない場合の処理体制を確保するために、都道府県知事が法令に基づき必要な措置を講じることがあります。その一環として、特定の業者に対して産業廃棄物の処理を指示したケースです。
これは非常に限定的な、例外のケースです。
④専ら業者に処理を委託する場合
古紙、くず鉄、あきびん、古繊維(せんい)といった、いわゆる「専ら物(もっぱらぶつ)」と呼ばれる産業廃棄物があります。これらのみを専門に収集・運搬または処分する業者(専ら業者)に委託する場合、マニフェストは不要です。
これは、専ら物が市場での再利用ルートが確立されており、マニフェスト制度ができる以前から適正に流通・処理されてきた経緯があるためです。しかし、マニフェスト不要の特例は、専ら業者が取り扱う特定の品目に限られ、他の産業廃棄物を同時に委託する場合はマニフェストが必要です。
| 専ら物(マニフェスト不要)の例 | 注意点 |
|---|---|
| 古紙 | 新聞紙、段ボール、雑誌など |
| くず鉄 | スクラップ鉄、非鉄金属など |
| あきびん | 飲料用びん等(※産廃の区分上は「ガラスくず」に該当し得るが、専ら物として扱われる範囲があるため、委託先・性状で確認) |
| 古繊維 | ウエス、ぼろきれなど |
⑤再生利用認定制度の認定業者に処理を委託する場合

環境大臣が、再生利用に関する計画を認定した業者(再生利用認定制度)産業廃棄物の処理を委託する場合、マニフェストの交付は不要です。
この制度は、高い再生利用技術を持つ事業者の活用を促進し、資源循環を推進するために設けられています。
認定事業者は厳格な基準を満たしており、適正処理が担保されているとみなされます。
⑥広域的処理認定制度の認定業者に処理を委託する場合
環境大臣が特定の産業廃棄物について広範囲な処理計画を認定した業者(広域的処理認定制度)に委託する場合も、マニフェストは不要です。
例えば、家電リサイクル法やPCリサイクル法対象品目などの処理がこの制度の適用を受ける場合があります。この制度も再生利用認定制度と同様に、適正処理が担保されている業者のみが認定されています。
⑦運搬用パイプライン等の施設で処理する場合
産業廃棄物の運搬・処理を、運搬用およびこれに直結する処理施設を用いて運搬・処分する者に委託する場合は、例外としてマニフェストの交付が不要となります。
これらの施設は、排出場所から処理施設まで一連の設備として結びついています。そのため、途中で廃棄物が第三者の手に渡るリスクや不法投棄のリスクが極めて低いとみなされるています。
⑧産業廃棄物を輸出して処理する場合
産業廃棄物の輸出に伴い、本邦から輸出相手国までの運搬を委託する場合は、例外としてマニフェストの交付が不要となります。
ただし、この場合は廃棄物の越境移動に関する国際的な取り決め(バーゼル条約)や国内法に基づき、輸出承認や確認などの厳格な手続きが必要となります。
そのため、マニフェストに代わる管理が行われます。
⑨湾岸管理者・漁港管理者に廃油処理を委託する場合
港湾区域や漁港区域で船舶から排出された廃油を、湾岸管理者や漁港管理者が廃油処理施設で処理を行うために委託を受ける場合、マニフェストの交付は不要です。
これは、海洋汚染防止の観点から、公共性の高い施設管理者による適正処理が優先されるためです。委託できるのは、廃油処理に限定されます。
⑩海洋汚染防止法の許可業者に廃油処理を委託する場合
海洋汚染防止法に基づき、船舶からの廃油処理を許可された業者に委託する場合も、マニフェストの交付は不要です。
ただし、海洋汚染防止法に基づき許可を受けた者に委託する場合でも、対象は外国船舶で生じた廃油等、施行規則で定める範囲に限られます。
⑨と同様に、これは海洋汚染防止という特殊な目的のために、国の許可を受けた専門業者による適正処理が担保されているとみなされるためです。ここでも、対象は船舶から排出される廃油に限られます。
マニフェスト不要ケースで「絶対に守るべき」2つの注意点

産業廃棄物の処理において、上記10ケースに該当しマニフェストの交付が不要になったとしても、廃棄物処理法に基づく排出事業者の責任は免除されません。
特に注意すべきは、マニフェストが不要だからといって、他の法的義務まで不要になるわけではないという点です。以下の2点を確認してください。
法律で義務付けられた「産業廃棄物委託契約書」は必須
先に挙げた10の例外ケースに該当し、マニフェストの交付が不要になったとしても、委託基準に基づき、書面による委託契約の締結(および適切な保存)が必要です。
マニフェストは、廃棄物の流れを追跡し、最終処分が適正に行われたことを確認するための伝票です。一方、委託契約書は、排出事業者と処理業者の間で、処理に関する責任の範囲や、処理方法、料金、緊急時の対応などを明確にするための基本文書です。
マニフェスト不要の特例が適用される場合でも、この委託契約書を作成し、5年間保存する義務は依然として排出事業者に課せられています。
契約書に必要な記載事項は非常に多岐にわたり、法律で詳細に定められています。もし、産業廃棄物の処理委託契約書に不備があったり、契約書未締結の場合は、委託基準違反として行政指導や罰則の対象となる可能性があります。
特に、専ら業者にマニフェスト不要の産業廃棄物を委託する場合でも、委託契約書の作成は法律上の必須事項であり、省略することはできません。
| 法的義務 | マニフェスト交付 | 委託契約書の締結・保存 |
|---|---|---|
| 原則 | 義務(必須) | 義務(必須) |
| 例外ケース(10のケース) | 不要 | 義務(必須) |
有価物と判断される場合でも「到着時有価物」には要注意
産業廃棄物に該当しない「有価物」として売却・譲渡する場合、そもそも廃棄物処理法の適用外となるため、マニフェストの交付は不要です。
これは、上記の10の例外とは別に、産業廃棄物ではない物品を扱っているという根本的な違いに基づきます。
しかし、この「有価物」の判断基準は複雑で、排出事業者が「売れる」と判断しても、行政が産業廃棄物と判断するケースがあります。特に注意が必要なのが、「到着時有価物」の扱いです。
到着時有価物とは、排出時点では産業廃棄物として扱われ、運搬や処分業者の施設に到着した時点で有価物として買い取られることが決まるケースを指します。
この場合、排出時点では法的に「産業廃棄物」であるため、将来的に有価物となる見込みがあっても、マニフェストを交付する義務があります。
排出時点でマニフェストを不要と判断し、交付を省略してしまうと、マニフェスト不交付という重大な法令違反となります。
有価物であると判断するためには、おもに以下の判断基準を満たさなければなりません。
- 客観的に市場価値があること
- 適切に売買契約が成立していること
- 処理費用を上回る対価が支払われること
安易にマニフェスト不要と判断せず、排出時点での判断を重視し、疑義がある場合は産業廃棄物として扱いましょう。
基礎知識の再確認|そもそもマニフェストとは?なぜ必要なのか

そもそもマニフェスト制度がなぜ存在するのか、その目的と重要性を改めて確認しておきましょう。
マニフェストは、排出事業者が委託した産業廃棄物が、最終処分まで確実に適正に処理されたことを確認するための、唯一の管理票です。
この制度は、不法投棄や不適正処理を防止し、排出事業者責任を担保するために、法律で義務付けられています。マニフェスト交付義務を怠れば、たとえ産業廃棄物が適正に処理されたとしても、罰則の対象となります。
マニフェスト制度の目的と重要性
マニフェスト制度は、処理業者に委託した後も最終処分までの適切な処理を排出業者が確認・証明できるようにするために設けられました。
産業廃棄物が排出されてから最終処分に至るまでの処理プロセス全体を、排出事業者が完全に把握し、最終処分が適正に行われたことを証明することにあります。
この制度は、排出事業者責任を明確にするための核心的なツールです。廃棄物処理法では、処理の実務を委託しても、法的な責任そのものは排出事業者に残るとされています。
不法投棄や不適正処理が発生した場合、排出事業者がマニフェストにより処理の経過を証明できなければ、行政指導や罰則の対象となり、責任を問われることになります。
マニフェストは、排出事業者、収集運搬業者、処分業者の間で交付・確認・回付されることで、情報共有と監視の役割を果たします。
最終処分が完了した証明となるマニフェストの写しが排出事業者に戻ってきて初めて、排出事業者は責任を果たしたことになります。
上記で解説したように、特定の例外ではマニフェストが不要となりますが、これはその処理ルート自体が、マニフェストと同等かそれ以上に最終処分の適正性を担保していると認められているためです。
従来の紙マニフェストの運用課題
紙で運用されている従来方式のマニフェストには、排出事業者の業務負担を増大させる複数の課題が存在します。
最大の課題は、膨大な事務作業と保管コストです。排出事業者は、マニフェストの交付、処理業者からの回収、内容の確認、そして5年間の法定保管義務を負います。
多量の産業廃棄物を排出する企業の場合、年間で数千枚にも及ぶマニフェストの管理・ファイリング・保管スペースの確保は、無視できない事務負担となります。
次に、情報伝達の遅延と確認漏れのリスクです。
紙のマニフェストは郵送等で回付されるため、最終処分が完了したことを確認するまでの期間が長くなりがちです。
特に、処分完了期限が迫っているにもかかわらず、マニフェストの返送がない場合、処理業者への督促や状況確認といった追加業務が発生します。
マニフェストの写しの交付漏れは、行政罰則の対象となるため、担当者は常に厳重なチェック体制を敷く必要があります。
さらに、記載ミスや改ざんのリスクも挙げられます。
手書きによる記入ミスは避けられず、マニフェストの記載内容に不備があればすべてが無効と見なされ、再交付や訂正の手続きが必要です。
業務を劇的に効率化!電子マニフェストという選択肢

上記で見たように、産業廃棄物処理におけるマニフェストの交付義務が不要となるケースは限定的です。大半の産業廃棄物については、マニフェストの運用が必須となります。
そこで、煩雑な紙のマニフェスト管理を劇的に効率化する方法として、電子マニフェストの導入がおすすめです。
電子化により、マニフェストの交付や回付、保管、行政への報告といった一連の事務作業を大幅に削減でき、コンプライアンス強化にもつながります。
マニフェスト不要の例外を探す手間よりも、電子マニフェストで運用自体を効率化する方が、企業全体のメリットは大きいと言えるでしょう。
電子マニフェストの基本とメリット
電子マニフェストとは、産業廃棄物の処理に関する情報を、情報処理センター(JWセンター)を介して電子データでやり取りする仕組みです。このシステムを利用すれば、紙での交付・回付が不要になり、マニフェスト業務を電子で一元管理できます。
電子マニフェストの最大のメリットは、業務効率化とコンプライアンスの飛躍的な向上です。
1. 事務負担の大幅な軽減
紙のようにマニフェストを一枚ずつ作成、記入、複写、郵送する必要がなくなります。データ入力は一度で済み、回付もオンラインで瞬時に完了するため、マニフェストの紛失リスクもゼロになります。
2. 法定保存義務の自動履行
電子データは情報処理センターで厳重に保管されるため、5年間の保存義務を自動的に満たすことができ、保管スペースも不要です。
3. 法定報告の自動化
紙の場合、年に一度、都道府県知事等に提出するマニフェストの交付状況報告書の作成が必要です。一方、電子マニフェストでは、情報処理センターがこの報告書を自動で作成・提出してくれるため、行政報告業務が不要になります。
4. リアルタイムでの処理状況把握
処理業者による運搬・処分が完了すると、システム上で即座に確認できます。これにより、紙運用で発生していたマニフェストの戻り待ちや督促業務がなくなり、処理の遅延や未完了をすぐに把握できます。
これらのメリットから、マニフェスト不要の特例に頼るよりも、電子マニフェストを導入して業務負荷を軽減する方が、現実的な解決策と言えます。
| 項目 | 紙マニフェスト | 電子マニフェスト |
|---|---|---|
| 交付・回付 | 手書き、複写、郵送(手間と時間) | オンラインで瞬時(手間なし) |
| 法定保管 | 5年間、自社で保管が必要 | センターが自動保管(保管不要) |
| 行政報告 | 年1回、自社で作成・提出が必要 | センターが自動作成・提出 |
| 記載ミス | 訂正・再交付が必要 | 入力時のチェック機能で防止 |
電子マニフェスト導入の流れ
電子マニフェストを導入するには、排出事業者、収集運搬業者、処分業者の三者が、情報処理センター(JWセンター)のシステムに加入し、連携する必要があります。
ただし、マニフェスト不要の特例と異なり、一度導入すればすべての産業廃棄物に適用でき、継続的な事務負担を軽減できるメリットがあります。
主な導入の流れは以下の通りです。
1. 加入手続き
まず、公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)に、排出事業者として利用登録の申請を行います。年会費や登録手数料の支払いが必要です。
2. 契約とID/パスワードの取得
登録が完了すると、電子マニフェストシステムを利用するためのIDとパスワードが交付されます。これが電子マニフェストを運用する上での「鍵」となります。
3. 処理業者との連携確認
電子マニフェストの運用は、委託する収集運搬業者および処分業者のすべてが電子マニフェストシステムに加入していることが前提です。未加入の業者がいる場合は、紙のマニフェストを併用するか、業者に加入を促す必要があります。事前に取引先が電子化に対応しているか確認しましょう。
4. システム操作の準備
インターネット接続環境があれば、特別な機器は不要ですが、必要に応じてシステムに慣れるための研修や操作マニュアルの確認を行います。
5. 運用開始
委託契約を電子マニフェストシステムに登録し、実際に産業廃棄物を引き渡す際に電子マニフェストを交付します。これにより、紙のマニフェストの運用は原則不要となり、大幅な事務負担の軽減が実現します。
まとめ:マニフェスト管理に関するお悩みはご相談ください

本記事では、産業廃棄物処理におけるマニフェスト不要となる10の例外ケースと、委託契約書の締結義務や有価物の判断といった重要な注意点について解説しました。
法的にマニフェスト不要なケースは限定的ですが、業務効率化の最大の鍵は電子マニフェストの導入による恒久的な事務負担の軽減にあります。
「この廃棄物はマニフェスト不要の特例に該当するのか」「電子マニフェストを導入したいが、取引先との連携に不安がある」など、複雑な法判断や業務効率化に関するお悩みは、エコ・エイトにご相談ください。
貴社のコンプライアンス遵守と業務改善をサポートいたします。
エコ・エイトが選ばれる理由 EDI方式にも対応
EDI方式とは、電子マニフェストの処理をEDIサーバーを介して通信するシステムです。
従来の電子マニフェストは排出事業者による事前準備や回収後の登録作業が必須ですが、当社のEDIシステムをご利用いただくことで、排出事業者の手間と負担を大幅に軽減することができます。