カテゴリー:事業ごみ産業廃棄物
マニフェストの保管期間は?細かいルールや違反時の罰則まで徹底解説
「古いマニフェスト、いつまで保管が必要?」
「監査に備えて正確な期間が知りたい!」
産業廃棄物処理に伴うマニフェスト(産業廃棄物管理票)の保管義務は、法令遵守(コンプライアンス)とリスク管理の観点から、最も重要な業務の一つです。
マニフェストは、紙・電子を問わず、「原則5年間」の保管義務があります。
本記事では、この法定保管期間に関する「誰が」「いつまで」「どのように」保管すべきかという疑問を、排出事業者・処理業者の立場別に解説します。
さらに、保管期間が過ぎた後の廃棄方法や、管理業務を劇的に効率化する電子マニフェストの情報もお届けします。
目次
マニフェストの法定保管期間は関係者全員が「原則5年間」

マニフェストの保管期間は、廃棄物処理法第12条の3に基づき、排出事業者および処理業者の関係者全員が「原則として5年間」と定められています。
この保管期間の起算日は、交付されたマニフェストの種類(紙または電子)によって異なります。また、 各事業者が「どの時点での記録」を保管する義務を負うかによっても細かな違いがあります。
ただし、いずれの場合でもマニフェストの最終的な保管期間は一律5年です。
法定の保管期間が満了するまで、マニフェストを適切に保管しなければ、行政指導や罰則の対象となります。
【早見表】排出事業者と処理業者の保管義務と期間
重要なのは「いつから5年間」と起算するのか、そして「誰がどの種類(紙・電子)のマニフェスト」を保管する義務を負うのかという点です。
以下でマニフェストの保管義務と、起算点となる日付を確認してください。
| 立場 | 対象となるマニフェスト | 保管期間 | 起算日(いつから5年間か) | 保管義務がある文書 |
|---|---|---|---|---|
| 排出事業者 | 紙マニフェスト | 5年間 | 最終処分が終了した旨が記載された「E票」の送付を受けた日 | E票(最終処分終了報告) |
| 同上 | 電子マニフェスト | 5年間 | 情報処理センターへの登録日 | 登録データ(情報処理センターが保管) |
| 収集運搬業者 | 紙マニフェスト | 5年間 | マニフェストの交付を受けた日 | B1票、B2票(運搬終了報告) |
| 同上 | 電子マニフェスト | 5年間 | 情報処理センターへの登録日 | 登録データ(情報処理センターが保管) |
| 中間処理業者 | 紙マニフェスト | 5年間 | 自社の処分が完了した日 | C2票(処分終了報告) |
| 同上 | 電子マニフェスト | 5年間 | 情報処理センターへの登録日 | 登録データ(情報処理センターが保管) |
排出事業者は、適正に処理・処分されたことを確認する義務(マニフェストの最終確認)があるため、保管期間の起算点は「最終処分終了報告(E票)」を受け取った日となります。
一方、処理業者(収集運搬業者・処分業者)の保管期間の起算点は、自社が関与した記録(運搬終了報告や処分終了報告)を交付または受領した日となります。
電子マニフェストは、情報処理センターが各事業者に代わってデータの保存業務を行います。
そのため、電子マニフェストを導入すれば、物理的な保管スペースの確保が可能です。また、管理担当者の変更による紛失リスクといった実務上の課題を大幅に軽減できます。
なお、保管期間中は、行政検査等において 事業者自身が速やかにマニフェスト情報を確認・提示できる体制を 整えておく必要があります。
排出事業者が電子マニフェストを交付した場合であっても、紙マニフェストと同様に保管期間は5年間と定められています。
法定保管期間を過ぎるとどうなる?(廃棄処分してOKか)
マニフェストの保管期間(5年間)の終了後の廃棄処分は、法令違反にはあたりません。
ただし、マニフェストは、排出事業者名、産業廃棄物の種類や量、最終処分場所など、企業の機密情報や環境コンプライアンスに関わる重要な情報を含んでいます。
そのため、保管期間が終了したからといって、無造作に一般廃棄物として処分するのは避けるべきです。
【保管期間満了後のマニフェストの取り扱い】
- 機密文書としての取り扱い:
シュレッダーにかける、溶解処理するなど、機密文書として適切に処理を委託することが求められます。情報漏洩や不正利用を防ぐための重要な実務対応です。 - 社内規定の確認:
法定保管期間は5年間ですが、企業の監査対応や事業継続計画(BCP)の観点から、社内規定でそれ以上の保管期間を設けている場合があります。廃棄処分を実行する前に、必ず自社の文書管理規定を確認しましょう。 - 電子マニフェストの場合:
電子マニフェストは情報処理センターがデータを5年間保管するため、保管期間満了後の廃棄処分作業は発生しません。
マニフェスト紛失時の対応方法は?
マニフェストの保管期間(5年間)内に紙のマニフェストを紛失した場合、マニフェスト交付義務および保管義務の不履行として、法令違反となる可能性があります。特に行政指導や監査の際にマニフェストを提示できないと、排出事業者責任が問われかねません。
【紙マニフェスト紛失時の緊急対応手順】
- 事実の確認と状況把握:
まず、本当に紛失したのか、単に保管場所が不明なだけかを確認します。いつ、どの廃棄物に関するマニフェストで、保管期間のどの時点のものかを特定します。 - 関係業者への再交付の依頼:
紛失が確認されたら、収集運搬業者や処分業者など、該当するマニフェストの控えを保管している関係者に対し、再交付を依頼します。法律上、再交付の義務は明記されていませんが、コンプライアンス維持のため協力が得られるケースが一般的です。 - 紛失届の作成と行政への相談:
再交付が難しい場合や、紛失したまま保管期間満了が近い場合は、紛失届を作成し、速やかに管轄自治体の行政担当部署に相談します。事情を説明し、指示を仰ぐことが重要です。紛失した状態を放置せず、誠実に対応しましょう。
電子マニフェストを利用していれば、物理的な紛失の心配はありません。
紙のマニフェストの管理体制に不安がある場合は、電子化の検討がリスク管理策となります。
【詳細解説】排出事業者・処理業者ごとの保管ルール

マニフェストの保管について、排出事業者と処理業者(運搬・処分)で「誰が」「何を」保管するのかというルールが異なります。
結論として、両者とも保管期間は5年間で共通ですが、
- どの票(写し)を
- いつを起算日として
- どの立場で保管するのか
これらがが異なります。この違いを理解しないと、マニフェストの保管業務に抜けが生じる可能性があります。以下で、それぞれの立場で具体的にどのマニフェストを保管し、保管期間をどう管理すべきか、実務に即して解説します。
排出事業者の「マニフェスト」保管ルール
排出事業者にとって、マニフェストの保管期間の管理は、廃棄物処理法上の責務を果たす大切な業務です。
排出事業者の保管ルールは、委託した廃棄物が確実に最終処分まで完了したことを証明するためにあります。
【排出事業者が保管すべきマニフェストと期間】
- 紙マニフェストの場合の保管義務:排出事業者は、前述のようにE票を受け取った日を起算日として、5年間の保管期間がスタートします。E票が期日内に返送されない場合は、処理状況を確認し、行政に報告する義務も発生します。
- 電子マニフェストの場合の保管義務:電子マニフェストを利用した場合、保管期間である5年間、情報処理センターがすべてのデータを保管します。システムにアクセスすることで、必要なマニフェストの情報をいつでも確認できます。
マニフェストの保管期間中、排出事業者は行政の立入検査や監査があった際に、すべてのマニフェスト(E票またはデータ)を提示できなければなりません。特に紙の場合、年度別、現場別などで整理し、即座に取り出せる状態にしておくことが、実務における保管ルールの基本です。
産業廃棄物処理業者の「マニフェスト」保管ルール
産業廃棄物処理業者(収集運搬業者、処分業者)も、排出事業者と同様にマニフェストの保管期間は5年間と定められています。しかし、処理業者のマニフェストの保管ルールは、排出事業者から受託した記録を確実に残すことに重点が置かれます。
【処理業者が保管すべきマニフェストと期間】
- 収集運搬業者の保管義務
収集運搬業者は、廃棄物を引き受けた際、排出事業者から交付されたマニフェストの写し(B1票)を保管します。そして、中間処理業者または最終処分業者に引き渡した後、その証明となる写し(B2票)を受け取り、これを保管する義務があります。保管期間の起算日は、マニフェストを交付された日(受け取った日)です。 - 処分業者の保管義務
処分業者は、廃棄物の処分を完了した後、排出事業者に報告するための写し(C2票、D票、E票)を作成します。処分業者は、排出事業者から受け取ったC1票の写しと、自らが交付したC2票の写しなどを保管します。こちらも、マニフェストを交付された日(受け取った日)が保管期間の起算日となります。
紙のマニフェストは、処理業者側にも膨大な量になりがちです。したがって、保管期間の管理を徹底し、監査に備えてすぐに提示できる状態を維持する必要があります。
なお、産業廃棄物処理業者用についても、電子マニフェストのデータは情報処理センターが保管するため、紙の管理は不要となります。
特別管理産業廃棄物のマニフェストも期間は同じ?
「特別管理産業廃棄物」とは、爆発性、毒性、感染性など、人の健康または生活環境に被害を生じる恐れがある特に危険性の高い産業廃棄物を指します。病院などから排出される感染性廃棄物などが該当し、通常の産業廃棄物よりも厳格な管理が求められます。
では、この特別管理産業廃棄物にかかるマニフェストの保管期間は、通常の産業廃棄物と異なるのでしょうか?
【特別管理産業廃棄物のマニフェスト保管期間】
特別管理産業廃棄物のマニフェストについても、通常の産業廃棄物と同じく5年間の保管期間が定められています。
ただし、特別管理産業廃棄物に関するマニフェストは、その危険性の高さから、適正な処理と最終処分がより重要視されます。
万が一、不適正処理が発覚した場合、行政の追及は厳しくなるため、通常のマニフェスト以上に厳密な管理が求められます。
マニフェスト保管の効率化と注意点

紙のマニフェストを保管期間である5年間、確実に保管し続けることは、特に排出量の多い事業者や処理業者にとって大きな実務負担です。保管期間の管理ミスや紛失リスクを低減し、業務を効率化するためには、電子マニフェストの活用が最も有効な解決策となります。
ただし、紙のマニフェストを独自にスキャンして電子データとして保管し、原本を処分することは法令上認められていません。
以下では、この紙マニフェストの電子化の注意点と、保管期間管理を劇的に改善する電子マニフェストの具体的なメリットについて解説します。
紙マニフェストの「電子化(スキャン)」は現状NG!
「紙のマニフェストをスキャンして電子データとして保管し、原本を処分できないのか?という疑問は、実務担当者の方々からよく聞かれます。
しかし、結論から言うと、法定保管期間(5年間)内のマニフェストについては、スキャンした電子データを原本の代わりとして保管することは、廃棄物処理法上認められていません。
【紙マニフェストの電子化が認められない理由】
- 廃棄物処理法の規定:
廃棄物処理法第12条の3では、「帳簿を備え、記載事項を記載し、これを5年間保存しなければならない」と定めています。この「保存」の対象となるのは、原則として紙の原本と解釈されています。 - 証拠能力の維持:
紙のマニフェストには、各関係者(排出、運搬、処分)の署名または押印が求められ、これが適正処理の証拠となります。スキャンしたデータでは、原本に求められる証拠能力を完全に担保できないため、行政指導や監査の際に不備と見なされるリスクがあります。 - e-文書法の適用外:
企業文書の電子保管を認める「e-文書法」がありますが、マニフェストは同法の対象外とされており、電子保管の特例措置は適用されません。
したがって、紙で交付されたマニフェストは、保管期間の5年間、物理的に原本を保管し続ける必要があります。
保管の手間とリスクを解消したい場合は、最初から紙ではなく「電子マニフェスト」を導入することが唯一の合法的な解決策となります。
電子マニフェストのメリットと導入が義務化されるケース
紙マニフェストの管理負担や保管スペースの確保の課題を解決し、コンプライアンスを強化する有効な手段が、電子マニフェストの導入です。
電子マニフェストの主なメリット
- 保管義務の軽減と確実な保管:
法定保管期間である5年間、マニフェストのデータは情報処理センター(日本産業廃棄物処理振興センター)が保管します。排出事業者や処理業者は、物理的な保管スペースや紛失のリスクから解放されます。 - 事務処理の効率化:
紙の交付、回付、確認、保管、ファイリングといった一連の煩雑な事務作業が不要になります。処理状況はオンラインでリアルタイムに確認可能です。 - 法令遵守(コンプライアンス)の強化:
記載漏れや記入ミスなどを防ぎ、交付から最終処分までをデータで一元管理されるため、法令遵守が容易になります。
電子マニフェストの導入が義務化されるケース
一部の事業者は、紙・電子の選択に関わらず、電子マニフェストの利用が義務付けられています。
- 多量排出事業者:
前々年度の産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を含む)の発生量が年間50トン以上の事業場を設置している排出事業者は、電子マニフェストの使用が義務付けられています。この義務は、2020年4月1日から適用されています。
この義務化の対象となる事業者は、紙マニフェストの使用は認められません。
【実務担当者へ】保管期間を正確に管理するための具体的な方法
紙マニフェストの保管期間を管理し、行政検査などで即座に対応できる体制を整えることは、実務担当者の重要な業務です。特に起算日の認識ミスや、膨大な紙の山からの検索性を高めるための具体的な方法を紹介します。
1. 起算日の正確な把握と記録
排出事業者の場合、マニフェストの保管期間の起算日は「E票(最終処分終了報告)」を受け取った日です。この日を正確に把握するために、E票に受領日をスタンプまたは手書きで明記する習慣をつけましょう。
2. ファイル整理方法の工夫
- 年度別・月別管理:
マニフェストは、起算日を含む年度または月ごとにファイリングします。例えば、2020年4月に受領したE票は「2020年度マニフェスト」として分類し、2025年度末まで保管します。 - 廃棄物種類別や現場別での細分化:
行政検査では特定の廃棄物や現場に関するマニフェストの提示を求められることがあります。すぐに取り出せるよう、大分類(年度)の中に小分類(廃棄物種別や事業場コード)を設けることが有効です。
3. 台帳(エクセルなど)による二重管理
紙マニフェストの物理的な保管とは別に、エクセルなどでマニフェストの管理台帳を作成しましょう。台帳には以下の情報を記載し、保管期間の終了日を自動計算させる関数を入れておくことで、廃棄処分可能日を明確に把握できます。
| 項目 | 記載内容 | 目的 |
|---|---|---|
| マニフェスト番号 | 固有の番号 | 検索性の確保 |
| 廃棄物種類 | 具体的な品目 | 行政検査時の特定 |
| E票受領日(起算日) | E票に記載された日付 | 保管期間の起算 |
| 保管期間終了予定日 | 受領日から5年後の日付 | 廃棄可能日の把握 |
この二重管理により、紙が物理的に分散していても、データ上で一元的にマニフェストの保管期間とステータスを追跡できます。 行政検査への対応力が飛躍的に向上し、マニフェスト管理の精度が高まります。
まとめ:マニフェスト保管は「リスク管理」の最重要項目

本記事では、企業のコンプライアンスを担う皆様に向けて、マニフェストの法定保管期間が原則5年間であること、そして排出事業者と処理業者で起算点が異なることを解説しました。
正確な保管期間の管理は、行政検査や監査への対応、そして罰則(最大100万円以下の罰金など)を回避するための最重要項目です。
紙マニフェストは5年間原本保管が必要ですが、電子マニフェストへ移行すれば、保管期間の管理や物理的な保管スペースの課題は解消され、業務効率とリスク管理を両立できます。本記事で得た正確な知識を基に、必要な期間が過ぎたマニフェストは適切に機密文書として処分し、リスク回避と業務効率の向上を実現しましょう。
産業廃棄物ならエコ・エイトにお任せください!
EDI方式にも対応!
EDI方式とは、電子マニフェストの処理をEDIサーバーを介して通信するシステムです。
従来の電子マニフェストは排出事業者による事前準備や回収後の登録作業が必須ですが、当社のEDIシステムをご利用いただくことで、排出事業者の手間と負担を大幅に軽減することができます。
ぜひお気軽にお問い合わせください。